急性・慢性・内臓性の腰痛と鍼灸


腰痛には、昔から鍼灸施術が行われてきました。鍼灸は筋肉に原因があるケースにとても有効で、筋肉が強度に緊張している、何らかの動作をすると痛む、痛い所を触ると硬くなっているといった場合には、是非鍼灸施術を試みてほしいものです。

 ☆ギックリ腰とは…

 急性腰痛症のことを総じて「いわゆる、ギックリ腰」と言います。ギックリ腰にも色々なタイプがあり、以下に、代表的なものを掲げてみました。

1. 急性腰筋筋膜症
 ギックリ腰の中で、最も多いタイプです。斜め後ろの受話器を取ったり、膝を伸ばして床の物を取ったりなどの、日常の何気ない動作で起こります。腰椎周囲の筋肉が、肉離れのような状態になっていると考えられています。

2. 腰椎捻挫
 同じく、日常の何気ない動作で起こります。腰椎周囲の靭帯が損傷を受けたものです。

3. 腰椎椎間板ヘルニア
 重たい物を抱えたりした時に起こります。椎間板の変性により、髄核が外に押し出された状態です。重症になると、手術を受けなければならなくなりますが、再発しない保証がありません。

4. 腰椎横突起単独骨折
 腰椎の横に横突起(肋骨突起ともいう)という小さな突起があり、この突起が何らかの衝撃によって骨折したものです。中高年のゴルファーでは、ドライバーショットなど、力を入れて大きく腰を回した時などに起こることがあります。落馬して折れたという芸能人もいましたね。

5. 椎体圧迫骨折
 骨粗しょう症の人手、特に女性に多く診られます。尻餅をついた時などに起こります。長い人では、痛みが治まるまでに2年位かかる人もいます。

この他に、内臓の病変による急性腰痛などがあります。

鍼施術では、神経への刺激による鎮痛と、血流改善による筋肉の緊張緩和に伴う鎮痛の相乗効果が期待できます。また、灸を施すことによって、その温熱刺激により更に血行が良くなり、鍼施術の効果を持続させます。

 ギックリ腰を起こした場合、2〜3日は安静に努めるというのが一般的ですが、私は、できるだけ早期に治療を受けるべきと考えます。人間の身体には “痛みの悪循環” という、なんとも不都合な仕組みがあります。この悪循環を断ち切らないことには動くに動けず、仕事や家事はおろか、トイレに行くのもままならないという状態が続きます。

 当院を受診した場合、鍼施術で、とりあえず痛みを抑えます。痛みが治まれば、日常の動作は可能になります。その後、できるだけ安静に心がけ、自然治癒するのを待つわけです。

 筋肉に主な原因がある急性腰痛(急性腰筋筋膜症)では、鍼を打った直後から効き始め、2、3回施術すれば治ります。両脇を抱えられて来られたような人でも一人で歩いてお帰りいただけるような状態にいたします。また、腰椎椎間板ヘルニアの急性期には、週1〜2回の鍼施術で痛みが取れる場合があります。

 横突起単独骨折や椎体圧迫骨折、内臓性の急性腰痛などについては専門病院での治療や、場合によっては入院・手術などが必要になります。

 施術可否の判断は、腰痛が起こったときの様子や、これまでの腰痛経験の有無などの問診、触診、簡単な徒手検査などによって行ないます。場合によっては、医療機関での検査を薦めることがあります。

 当院で用いる鍼は、一般的には、長さ約5センチ、直径約0.2ミリのステンレス製(使い捨て)です。打つ場所は、痛みのある局所、緊張している筋肉の個所、東洋医学の考えに基づく経穴(ツボ)などを考慮して決定します。

 生活習慣に関係する慢性腰痛でも鍼施術の直後に痛みは緩和します。しかし、施術しなければ徐々に痛みがぶり返すので、痛みが強くなる前に鍼を打つことを繰り返す施術を行ないます。

 その他、 脊柱管狭窄症 間欠性跛行 が現れている場合、週1回の鍼で、続けて歩ける距離が伸びることがあります。

 鍼灸施術に適さない腰痛もあります。安静にしていても痛む、夜間に痛む、全身の健康状態が悪いなどの場合(内臓性腰痛の可能性)や、腰痛以外に何らかの重い症状を伴っている、例えば、腰痛でも痛みの発作を繰り返す、脚の筋肉が急にやせる、まひ症状を起こす、失禁などぼうこうや直腸障害を伴うといった場合はまず内科や泌尿器科、女性なら婦人科も含め、腰痛の専門医がいる医療機関に行くことをお奨めします。

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